ITmediaビジネスONLiNE 様に「コンビニのオムニチャネルは定着するのか」と題したレポートが掲載されています。
書いているのは、「大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー」の方で、「コンビニ探偵! 調査報告書」という連載の記事です。
この記事では、昨年11月にオープンしたセブン&アイホールディングスの「omni7 (オムニ・セブン)」を取り上げています。
この記事は、コンビニのオムニチャネル化に目を付けたところはよかったと思いますが、ちょっと(相当?)的外れなものとなっています。
私の考えも含めて、少し掘り下げてみたいと思います。
「コンビニのオムニチャネルは定着するのか」の中身
記事の内容
記事全体は、
- コンビニ商品へのチャネルが増えて、コンビニの使い方が変わる可能性がある。
- しかし、コンビニ店舗内での在庫管理の性格上の問題や配達の問題があり、全てがうまくいくとは限らない。
- 現状の通販を超えるにはまだまだ整備が必要。
といった論調です。
よく知らない人がコンビニ通販について書いた文章なら「ふ~ん」と流すところですが、コンビニに関する連載を持っている人が書いた文章としては、かなり気になります。
オムニチャネルについての認識不足?
どうして気になるかというと、オムニチャネルについての基本的な認識が足りないように思うからです。
「コンビニで商品を買う」というのは、店内にズラリと並ぶ商品の中から目的のモノを手にとってそれをレジで支払うだけであったが、「インターネット」「店舗」「配達」の3つがつながることで、買い物の概念を変えてしまう可能性を秘めているのだ。
記事にはこのような文があります。たぶん、この記事の肝の部分でもあります。
ただ、ここが認識不足です。
記事は次のような文から始まっています。
2015年11月からセブン&アイ・ホールディングスのインターネットショッピングサイト「omni7(オムニ7)」がスタートした。
そうなんです。筆者の方が自ら書かれているとおり、omni7はセブン-イレブンのサイトではなくて、グループ全体のショッピングサイトとなっています。
そして、omni7のサイトを見てみれば分かるとおり、セブン-イレブンはいくつかある「チャネル」の1つに過ぎません。
omni7は、西武百貨店やイトーヨーカドー、セブン-イレブン、LOFTなど、グループ全体の商品を扱っています。
そして、セブン-イレブンは、その物流の拠点になるということがポイントです。
コンビニの役割は「支店」
omni7のつくりを見てみると、セブン-イレブンが求められているのは商品を供給することではなく、物流の拠点となることです。
また、omni7では、不良品などの返品、そして返金もセブン-イレブンの店舗でできます(一部条件あり)。
ここが最大のポイントだと思います。
私がomni7オープンに関して書いた記事(omni7 (オムニ・セブン)誕生)でもそのことを指摘していて、次のように書いています。
通販で販売している商品を店舗で受け取ることができるだけなら、アマゾンや楽天がコンビニと提携して行っていますが、それだけではなくて、返品や返金の受付なども行い、全国のセブン-イレブンが「支店」のような感じの業務を行うことになるそうです。
そうなんです。omni7では、グループの中で最も多くの店舗を持つセブン-イレブンに「支店」の役割を持たせているんです。
おそらく、今後、コンビニがオムニチャネルに関わる場合は、どのチェーンでも同様の役割になる思います。そして、この部分がコンビニをオムニチャネルに関わらせる最も重要で意味のある部分です。この「支店」の役割がないのであれば、全く意味を持ちません。
したがって、コンビニのオムニチャネル化に関しては、コンビニの商品在庫や配達の問題というのは、ほとんど議論にならないと思われます。
最後に
コンビニのオムニチャネルは定着するのかの筆者の方はコンビニには詳しいですが、コンビニの枠の中で考えすぎています。
今後、オムニチャネルに限らず、コンビニは物流の拠点にもなっていくはずですから、視野を広げての執筆が期待されます。
ただ、残念なのは、筆者の方は、omni7のサイトを見ずに記事を書いているような気がするのです。omni7のサイトを1回でも見れば、こんな記事にはならないような。
単にオムニチャネルという言葉だけ調べたっていう感じがしますね。